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熱烈恋愛小説: 熱と霧

 Marcus は愛馬を僻地の建物へと疾駆させていた。彼がそばを通り過ぎる時、女性衛兵の一人がごく微かに頬を赤らめた。下馬した彼は、口を開く前に厩舎の女性の肩に手を置き、手綱を手渡した。
「Kama 、俺たちの最後の会話について考えたことあるかい」
 Marcus は真面目くさった風に眉間に皺を寄せて尋ねた。

 Kama は目を白黒させた。Pandaren の特徴がその動きをより大袈裟にしてみせた。
「人生の伴侶が深く考えることだとは思わないわ」

 Marcus は立ち去りながら、肩越しに振り返り豪快に笑った。
「いつか彼女に会いたいもんだ!」

「霧中酒家」はいつになく賑わっていて、Marcus は人混みをかき分けて隅の薄暗い一角へ身を置いた。風変わりな声が彼の名を呼んだ。
「Marcus 、また会えて嬉しいですわ」

 Marcus は微笑み、暗がりに目を凝らした。
「Goya 夫人、こちらこそお会いできてよかった」

 Goya は丁寧にお辞儀をした。Marcus は、Pandaren がよく「活発」という言葉でもって表現される理由を思い出し、急に心が温まるのを感じた。彼は同じやり方でお辞儀をし Goya 夫人の手を取りそっと口づけつつも、彼女の背後に立つ、険しい目と目の間に一筋の傷を持つ図体の大きな護衛からはずっと目をそらさなかった。

「さて Marcus 。何か……特別なものはいかがかしら? あいにく今日はいつものが無くて」
 Marcus は「いつもの」が強調されていたことも、その言葉にとても残念に思う気持ちが織り交ぜられていたことも見逃さなかった。再び二人の視線が合い、Goya 夫人は離れる前に Marcus の手を握った。

「もしよろしければ、確認させていただいても?」
 Marcus は尋ねた。

「素晴らしい鎧が数点。小さなペットが一匹。それに異国の乗り物も」
 Goya 夫人は答えた。特徴のある、陽気な素早い返答である。彼女は思慮深そうに装い、一呼吸おいて顎に手をやった。
「でも一番価値のある財宝は二階でしたわ」

 Marcus は己の表情が喜々としていることに気付かぬうちに、眉をおどけたように釣り上げ、目を丸くしていた。
「では、また会う日まで」
 Goya 夫人は落ち着き無く視線を動かした。Marcus はいそいそと奇妙な酒場の階段を上っていた。

 最後の一段でつまづきかけるほどの美しい存在が二人、上の部屋で待っていた。一人は Sunwell そのものの色をした流れるような長い髪をしており、もう一人は短く切った漆黒のショートヘアをしていた。色香に目を奪われてしばし言葉を失った後、彼は突如あることに気付いた。敵の顔に見とれていたのだ! Marcus は大剣を鞘から抜き放ち、脈打つ輝きをブラッドエルフに浴びせた。

 煌めく髪をしたブラッドエルフが最初に口を開いた。
「あらあら、どなたか戦う気満々のようね」
 彼女は Marcus の前に立ち、彼の方へ顔を向けたまま手を剣の切っ先に置き、そっと下へと向けさせた。
「一目惚れを信じる? それとも、もう一度歩いてきましょうか……?」

 Marcus は鍛え上げられた鋼を油断無く彼女に突きつけながら近寄り、身を屈めた。彼はブラッドエルフの耳に静かに何か囁き、彼女の反応を楽しみながら身を離した。

「だめ、だめ。私は嫌よ……でも妹ならするわ!」
 金髪のブラッドエルフがくすくすと笑った。黒髪のブラッドエルフは華奢な肩をすくめて頷き、黙って片方の眉を上げた。ごくわずかな身振りで彼女の体は内なる強烈な炎で輝き、身に着けていた衣服を焼き尽くした。Marcus が逞しい両腕で抱きすくめると、彼女は何か囁いた。Marcus の気付かぬ間にシンボルが頭上に一瞬現れ、彼を白い輝きで覆った。

「これは……素晴らしい心地がする。何をした?」
 彼は尋ねた。

「Fortitude ですわ、お客様。ご入り用でしょうから」
 腕の中で重みが無くなり、彼女が文字通り宙に浮いていることに気付いたのはその時だった。Marcus は頭の中で無数の筋書きを展開させ、くらくらとしてきた。彼の手はやがて……

<続きは霧に覆い隠されていた。>

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